ぜんそくと私

幼少期から体の弱い子供であった。

特に気管支が悪く、よく咳き込んでいた記憶がある。

小学校低学年の頃、父が脱サラをして、家族で鉄工所の経営を始めるようになった。

長女であった私は貴重な労働力であり、父と一緒に夜遅くまで旋盤を回したものであるが、鉄粉は更に私の気管支や肺を害し、父がヘビースモーカーであったことに加えて私の体を蝕んでいた。

そうは言っても、生活がかかっているため、私は働かなければならなかった。父は厳しい人であった。

 

〜働かざる者食うべからず〜

 

生きるために私は必死で旋盤を回していたのである。

咳は出ても、気力が私を支えていたため、病に伏すということはなかった。

鉄工所で旋盤を回す仕事の中で、私の体を蝕んだのは鉄粉やタバコの煙だけではなかった。今思えばであるが、私は常に前屈みで細かい作業をしていたために、とても姿勢が悪く、常に猫背であったのである。

整体の仕事をするようになり、姿勢がどれだけ人の体の健康に関わるかを実践や研修を通して学んできた。

人間の内臓は正しい姿勢と、人間の本来の生きるための活動によって支えられている。

正しい姿勢で生活(生命活動)を行っていれば、人間が病気になることは滅多にない。

肺は、人間本来の胸を張った正しい姿勢により、しっかりと隅々まで新鮮な酸素を取り入れることができる。人間は空気がないと生きていけない。肺の健康は生命活動に直結する極めて重要な要素である。

私は前屈みでずっと仕事をしていたため、肺の本来の力を発揮させていなかった。加えて、あまり綺麗とは言えない空気環境。病気にならない方がおかしい。

中学に上がった頃は立派なぜんそくもちではあったが、日々の多忙さの中でいつしか咳をすることも忘れていた。

本格的にぜんそくの症状が再発したのは、更年期障害の時期である。事業が傾き、子供は受験に失敗して引きこもりになり、夫は家を出て行った。

ストレスが一気に押し寄せて、それまで多忙の中で忘れていた咳が蘇った。

更年期の様々な症状の中、咳にも苦しめられて本当に死ぬかと思い、一度三途の川の向こうに両親の姿を見てしまった。

だが、両親は来るなという。

これは使命か。

私の祖母は、治療家であった。

いずれ、自分も治療家なりたいと思っていたが、教職や夫と立ち上げた会社の仕事をしているうちに、心の中で気になりつつも忘れていたのだ。

自分は自分の症状を治すべく、貪欲に学び始めた。

更年期障害は、治療の仕事をしていくうちに和らいだが、ぜんそくは常に続いていた。

何か治る手段はないかと悩んでいる時に、左足の骨折で入院を余儀なくされた。

その入院中は、あんなに毎日出ていたひどい咳が、ぴたりと止まっていたのである。

リハビリで正しい姿勢で歩く練習をし、仕事に追われないストレスのないい生活をすることで、咳が突然出なくなったのだ。

次に私は姿勢とぜんそくのキーワードで色々調べてみた。

いつも、自分が患者さんに対して施術をする中で、いつの間にか自分のケアを怠っていたことに気づいた。施術中はどうしても猫背になる。

それに気づいてからは自らの姿勢矯正のために、色々な体操をしたり、器具を使ったりしてセルフケアに励み、それまでは疲れるとぶり返していた咳が、ほとんど出なくなったのである。

ぜんそくは「姿勢」と「ストレス」のケアで症状が改善するのだ。

これは、私にとって大いなる発見であった。

それ以来、ぜんそくの症状で患者さんからご相談をお受けするたびに、私がぜんそくを乗り越えた体操の指導を行ったり、姿勢矯正グッズの紹介をさせていただいている。(※市販のものです。)

患者さんからは続々と「かなり症状が改善した!」とのご報告を頂いており、治療家冥利につきると、自らの経験を素晴らしい経験であったと誇れるまでに至るのである。

ただ、姿勢の改善は意識や体力あれば誰でもできるもの。しかし、現代社会では様々な事情により「セルフケア」を蔑ろにする方が多いのだ。

私の気導術では、人生経験を活かしたカウンセリングを行いつつ、患者さんに「生きる意欲」を手を通して吹き込むことにより、エネルギーの欠乏した患者さんが、自ら生きる力を発動させるきっかけ作りを行うものである。

自分で調べて自分で動ける人はそれで良いが、自分で動く力すら欠乏している患者さんには、是非とも当院にお越しいただきたい。

生きるエネルギーを体に充電させて、自分の力を発揮できる心と体の環境作りを行う。そのお手伝いを、是非ともさせていただきたいのである。

 

独自のぜんそく治療〜幼少期から苦しんだ末に〜